Bouquet!

暇な大学生です

絶対勝つぞ!!!うおおおおおおお!!!!

テストが終わったので本を読んだりアニメを見たり、だらだら過ごしている。友達から借りたゲームが面白くてついハマってしまった。ゲームでも音楽でもアイドルでも何でも、なにかに熱中するということは我々を現在へ強く引きつける。輝かしい過去を思い出すことや暗い未来へ思いを馳せることから抜け出せなくなったとき、我々はこういったものを手がかりにして現実へ帰還しなければならない。

 

いくつかの感想 ネタバレしかない

さくらの雲*スカアレットの恋/きゃべつそふと

友達から借りたエロゲ。構成がかなり極端で、16、7章ある内容のうちで9章までは全く面白くない。プレイしながらほんまにこれ面白いんか?と勧めてきた友達を疑っていたが第10章から突如として異様に面白くなり、後半からは一気にプレイしてしまった。ミステリーというジャンルの特質上、いくつかの部分でトリックの粗が指摘されているようだ。俺は推理小説を推理せずに読むタイプなので一切気にならなかった(ある種の人間にとっては信じられないことだが、こういう人種は一定数いる)。まあ中国人(ノックス的な意味で)が出てきている時点で大体のプレイヤーは緻密な考証を楽しむゲームではないことを了解しているだろうし、これが気になる人はそんなにいないはずだ。

それより俺は、所長のことを考えてしまう。(特にある程度の長さの)物語の終わりは喪失感を伴うもので、これはさくレットに限った話ではない。だが今回の喪失感はそれだけではない。この物語の舞台は100年前の東京だ。したがって、ラストシーンで主人公が未来(2020年)へ帰った時、当然ヒロインたちは全員死亡している。これに対して、例えば来海えりかは今も(彼女の物語世界の中で)息をしている。俺たちはその続きをいくらでも想像することができる。TwitterなりPixivなりをちょっと検索してくれれば、彼女が進路選択や叶わない片想い、大事な親友とのちょっとした喧嘩で悩んでいるところをいくらでも見られるはずだ。だが不知出遠子は、茅野メリッサは、水上蓮(ところで、こいつ何?こいつだけめっちゃ影薄くない?)は、レベッカクレーガーは、2020年時点で既に死亡している。俺たちの想像はこの2020年という時点で完全に断ち切られてしまう。だって彼女たちはもう死んでいる。そして俺はレベッカクルーガーのいない現実へ連れ戻される。物語内で死が描かれるというのはそういうことだ。

しかし、俺が思うに、さくレットの良心はこの「登場人物の死」を決して物語の主眼においてはいないところだ。この物語の主眼は、100年の時を超えるミステリイADVというジャンルのとおり、あくまでタイムスリップを利用したミステリーだ。所長が死ぬのはこのタイムスリップというガジェットを用いたことによる不可避的なものにすぎない。つまり、所長は死ぬために生まれたわけではない、ということだ。この死に俺は嫌悪を感じない。一方で、死を工業的にパッケージングして売り出す作品もある。メディアワークス文庫では年間数百人の無垢で短命な美少女が生産されている。こういったキャラクターの存在理由は、端的に言って死ぬこと、ただそれだけだ。こういうものを俺は不快に感じる(もちろん泣きはする。多分こういった作品で泣けるかどうかは単純に技術的な問題なんだろう)。

面白かったんだけど、所長のことを引きずりすぎて勉強が手に付かなくなってしまった。助けてくれ〜〜〜〜〜!!!!!

 

敵は海賊海賊版、猫たちの饗宴、海賊たちの憂鬱、宇宙探査機迷惑一番、天国にそっくりな星、永久帰還装置、だれの息子でもない、我語りて世界あり、小指の先の天使、膚の下、ライトジーンの遺産、鏡像の敵/神林長平

どれも面白かった。四つ感想を書く。

『天国にそっくりな星』かなり良かった。こういう「ここでない本当の世界」が出てくる作品はそれこそマトリックスとか含め唸るほどあるが、この小説で主人公は、マトリックスとは対照的に、「今自分がここにいる(仮の)世界」を選び続ける。本当の世界がどんなであれ、今まで生きてきた仮の世界には、それはそれで大切なこともあるのだ。こういう作品で「本当の世界」を選ばない作品を見たことがなかったのでかなり面白かった(もちろん「天国にそっくりな星」の「本当の世界」が最後まで明かされなかったことも考慮するべきだろう。あなたはこれを使ってこの作品からメタ性をある程度捨象できる。正体の明かされない仮の世界、それはつまりただの現実だ)。

『永久帰還装置』神林長平は物や人につける名前のセンスが良すぎる。タイトルもそうだし、主人公の職業(?)の永久追跡刑事とか。永久帰還装置は神林長平がつけた名前の中で一番好きかもしれない。内容も面白い。もちろん神林長平meetsラブロマンスって感じの雰囲気も面白いけど、アンブロークンアローで神林が明確に形にした「人が操縦されつつも自律性をもつこと」という一見かなり過激な思想の端緒がこの本で初めて明らかになった気がする。

『膚の下』神林作品の中でもクソ長い作品なので正月休みに一気に読んだ。自分が作ったものに疎外される人間を描き続けている神林長平だが、この作品は人間を疎外するアンドロイドの視点で物語が進むのが特徴だ。神林作品の長編は割と勢いで話が進んでいくため、途中で訳が分からなくなることがたまにあるのだが、これはそんなことはなく丁寧に話が進められている。1990年台の神林長平の集大成という触れ込みは嘘ではなく、「疎外される人間」というテーマについてはここで一区切りついた感がある。『あなたの魂に安らぎあれ』で疑問に思ったところも解消されたし読んでよかった。マジでクソ長かったけど。

『鏡像の敵』前読んだ『神林長平論』で考察されていた兎の夢目当てで読んだが、「渇眠」が面白かった。神林作品の時空感はかなり頻繁に乱れるが、今回の原因は寝不足だ。眠りとは人が自己を共同幻想(たとえば時間)と合致させるための手段であり、不眠を患って共同幻想から疎外された人間は各々の時間の中で生きるしかなくなる…という話。テーマも面白いし、時間軸がめちゃくちゃで何がどうなってるのか全くわからないのに文章のドライブ感でぐいぐい読ませてくるのが気持ちいい。「ここにいるよ」も好き。

ところで、俺は前々から「米澤穂信ぜったい七胴落とし好きやろ…」と思っていたのだが、実家に帰ったとき読み返した『米澤穂信古典部』で折木奉太郎の本棚に七胴落としあって笑った。やっぱりね